政局でオセアニア通貨に明暗【フィスコ・コラム】【注目トピックス 市況・概況】
01 Febrero 2020 - 4:30PM
Fisco
オセアニア通貨が政局によって変動しそうな状況になってきました。豪ドルは内閣支持率の急落が政権への不安要因となり、目先の売りにつながりかねません。対照的に、NZドルは次期総選挙での与党勝利が見込まれ、買いを集める可能性があります。<br/><br/><br/>オーストラリア、ニュージーランドの直近の経済指標は堅調さが示され、いずれも中銀による利下げ観測の後退により豪ドル、NZドルの買い戻しが進んでいました。ところが、中国の新型コロナウイルスの感染拡大で、同国との交易関係を背景に、今度はともに売られやすい地合いとなっています。ウイルス感染の被害が広がりをみせれば、オセアニア通貨はドルや円に対して一段安が見込まれます。<br/><br/><br/>豪ドルの場合、さらに政治リスクが加わりそうです。オーストラリアでは昨年から大規模森林火災による被害が深刻化していますが、モリソン首相は家族とハワイでの休暇を楽しみ、対応が遅れたことが発覚。帰国後、復旧支援に積極姿勢をアピールしたものの、モリソン政権に対する有権者の反感は収まりません。最近の支持率調査で昨年5月の発足後、初めて野党を下回りました。<br/><br/><br/>従来のオーストラリアの政治情勢であれば首相降ろしの機運が高まり、瞬く間に政局の風が吹いていたでしょう。ただ、2010年以降の10年間で政権交代は4回にのぼり、政治の混乱が経済の不安をもたらすとの批判を招いてきました。与党・自由党の党則変更で、これまでのような内紛は回避されそうです。といっても、低支持率の政権が向こう2年以上も続くとなれば、政策運営などに支障が出かねません。<br/><br/><br/>一方、ニュージーランドのアーダーン首相は1月28日、総選挙を9月19日に実施すると発表しました。自身の労働党は2017年9月の前回選挙で第2党にとどまったものの、第3党のNZファースト党との連携によって9年ぶりに政権を奪還。アーダーン氏は37歳で首相に就任後間もなく、出産で育児休暇を取るなど話題になりました。ただ、最近は住宅供給政策が難航し、支持率低下が顕著になっています。<br/><br/><br/>両国とも政権与党に対する風当たりが強まるなか、オーストラリアではモリソン首相の支持率は野党・労働党のアルバニーゼ党首を下回るなど、不人気ぶりが鮮明です。それに対し、ニュージーランドはアーダーン首相の支持率が最大野党、国民党のブリッジス党首を大きく上回り、政権運営は安定的。総選挙に合わせ大麻合法化の是非を問う国民投票も実施されるため、その容認とともに与党の勝利が見込まれます。<br/><br/><br/>豪
ドル・NZドル相場にも、そうした政治情勢を反映した値動きがみられます。2012年には1豪ドル=1.38NZドルとなっていましたが、2015年には1.00NZドル寸前まで豪ドルは下落しています。国力の違いでパリティ割れは回避し、その後は1.05-1.15NZドルを中心レンジに推移しています。とはいえ、このままニュージーランド政治の安定が鮮明になれば、豪ドルの価値はNZドルを下回ることになる可能性もあります。<br/>(吉池 威)<br/><br/>※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。<br/><br/><br/>
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