東京金融取引所(TFX)が手掛ける取引所為替証拠金取引「くりっく365」は、4月の取引数量が前月比40.6%減の199万0740枚、1日の平均取引数量は9万0491枚と前月比で減少した。月末時点の証拠金預託額は3970億円と前月比で約205億円増加した。取引通貨量では、米ドル、トルコリラ、メキシコペソ、豪ドル、南アフリカランドの順となっている。一方、取引所株価指数証拠金取引「くりっく株365」は、4月の取引数量が前月比30.3%減の252万6870枚、1日の平均取引数量は11万4912枚と前月比で減少した。月末時点の証拠金預託額は502億円となり、前月比で約19億円の増加となった。<br/><br/>取引数量トップは米ドル・円の46万9733枚(前月比45.2%減)であった。上昇が続いていた米長期金利が落ち着いたことで、日米金利差拡大の動きが一服。金利差に着目した投機筋による「円買い・ドル売り」ポジションの巻き戻し(円売り・ドル買い)も一巡したことで、それまでの反動から円高・ドル安へと水準訂正する動きとなった。3月末には一時1ドル=110円70銭台にまで円安が進んでいたドル円は、4月下旬には一時1ドル=107円台にまで戻した。ただ、水準訂正を経た後の4月後半から月末にかけては再びドル買いの動きが強まり、1ドル=109円台にまでドルは上昇した。英ポンド・円は17万6919枚(前月比50.8%減)だった。先進各国の中でもとりわけ早くからワクチン接種が進んでいた英国では4月上旬には既に人口の約半数が1回目の接種を終えており、コロナ禍からの早期脱却が期待されている。この日本と比較したワクチン接種率の格差を背景に、今年に入ってからの英ポンドは対円で一本調子で上昇していたが、4月は一時的な調整局面となった。それまでの英ポンド買い・円売りの動きがやや巻き戻され、4月上旬に1ポンド=153円にあったポンド円は下旬には一時1ポンド=149円まで下落した。<br/><br/>5月のドル・円は堅調か。上述のようにドル買い・円売りの動きにはやや落ち着きが見られるようになったが、日米間の景況感の差は大きい。米国ではワクチン接種が進展しているほか、バイデン政権による大型財政出動により経済が大きく持ち直している。2021年1-3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率換算で6.4%増え、GDP規模はコロナ危機前の2019年10-12月期の約99%まで回復している。ワクチン接種に消極的な国民の一定数の存在で今後は米国でのワクチン接種ペースが鈍化するのに対し、遅ればせながら、日本ではワクチン接種が徐々に進展する見込み。そのため、ワクチン接種ペースだけに着目すればドル買い・円売りの動きが再び強まることは想定しにくい。ただ、巨額の財政出動に支えられた米国の回復スピードは目覚ましく、3月に続き4月の米ISM景況指数は製造業および非製造業ともに好不況の境目である50ptを大幅に上回る60pt超を記録している。今後も日米間では景況感の差が存在することが想定される。また、米10年物国債利回りが1.5%台までに低下した後、安定した動きを続けている一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブンインフレ率(BEI)は上昇を続けている。エネルギー、貴金属、穀物などの商品市況では逼迫感が続いており、世界的なインフレ懸念が強まっている。5月中旬までは日米ともに主力企業の決算に目が行きがちだが、決算シーズンを終えた後は、再び「インフレ加速・長期金利上昇」が市場での警戒テーマになることが想定される。その場合には、改めて日米金利差に着目した投機筋によるドル買い・円売りの動きが出てくる可能性もあろう。メキシコペソ円はもみ合いか。米国経済が力強く回復することで、対米輸出比率の高いメキシコ経済の回復が期待される。一方、上述のように世界的なインフレ加速と、それに伴う米長期金利の上昇に対する思惑は、現状はいったん和らいでいるものの、今後も警戒要素として残る。再び米長期金利が上昇した場合には、通貨安を通じたインフレによりメキシコ経済に下押し圧力がかかる可能性がある。その際には、対ドルでの下落を通じて対円でもメキシコペソは軟化する可能性があろう。<br/><br/>

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